採用・キャリア関連

 2026.01.23

救急センターで聞いてきた「帰りたい」。訪問看護で10億円の資金調達をして挑む経営者の本音|WyLのメンバー紹介

※この記事は約5分くらいで読むことができます。

WyL(ウィル)は今年6月に10周年を迎えます。事業を起こした理由やなぜ挑戦をしようと思ったのか。キャリアのご参考になればと思い、メンバー紹介で代表の岩本の本音をコラムにいたしました。

「僕の現場」は、いつも人のそばにある

僕は、看護の現場が好きだ。

救命救急センターで働いていた頃、現場は毎日がドラマ以上にドラマティックだった。緊迫した空気のなか、多職種が一丸となって命をつなぐ日々。DMATとして出動していく先輩の背中は、今思い出してもやっぱり「カッコいい」と思う。

訪問看護ステーションを立ち上げてからは、自転車で町を駆け回り、利用者さんのもとへ通った。何度も通り抜けた商店街の揚げ物の香ばしい匂い、ベッドサイドでのふとした会話が今も鮮明に胸に残っている。

これまで過ごした全ての日々が、「訪問看護をもっと良くしたい」という原動力になっている。

経営者になり今は、少し現場から離れた場所にいる。だけど視点を上げることで、スタッフが安心して現場に立てるような、持続可能な仕組みづくりに取り組めている。

「家に帰りたい」と願う人に、1日でも早く「お帰りなさい」と声をかけられるように。その想いを実現するため、僕たちは、WyLという土台を広げようとしている。

「岩本さん、現場に行きたいんでしょ」と言われることもある。

もちろんだ。いつでも行けるように、体力作りはずっと欠かさず続けている。でも、スタッフとの1on1の時間だったり、新規店舗の物件探しだったり。それらも全部が、僕の“現場”だと思っている。

なぜこんなにも「現場」を想うのか。それは、救命の現場で出会った患者さんの姿が、今でも僕の中に残っているから。

「家に帰りたい」と望む人たちがたくさんいた。当時の僕にはすぐにどうもすることができなかったけど、今の僕なら、できることがある。

「全ての人に“家に帰る”選択肢を」

WyLの理念は、あの頃に叶えられなかった願いの、その続きを目指している。

キャリアの原点—「看護の仕事、なんかおもしろそう」

僕が看護師を目指したきっかけを聞かれると、ちょっとだけ困ってしまいます。
「子どもの頃に入院していて……」といった原体験はないんです。付属高の1年生のときに、「看護医療学部」が設立されたのを知って、「なんかおもしろそうだな」と思ったのがきっかけでした。でもその直感が、いまの人生を形づくった。

あの時の“なんかおもしろそう”が、今も僕の中で続いているんです。

大学の実習で出会ったのは、想像していた以上に多様な医療の現場でした。天井が抜けた家に住むおばあちゃん。精神科病院で何十年も暮らしている方など。さまざまな状況に応じた医療が必要なのだと知りました。

現場では、看護の仕事におもしろさを感じる一方で、若造なりに「どうしてこうなんだろうな」と感じることもありました。できたほうがよいケアが制度上むずかしかったり、頑張っても評価されにくかったり。

日本の医療は、国が決めた制度や報酬の設計に基づいています。だったら、その“仕組みそのもの”を知っておきたいなと思いました。それで、医療政策のゼミに入り、看護連盟の青年部に顔を出すようになりました。

卒業後も現場と制度の両方に関わりたかったので、「仕組みを知る側も続けたらいいよ」と言ってもらえる病院を探しました。縁あって北里大学病院の救命救急センターに入ったのですが、現場に慣れることにいっぱいいっぱいで、制度のことには手が回りませんでした……。

なんでベッドを空けられないのか

配属先は救命救急センターのICU。救急搬送の依頼が止むことがない現場で、怒涛の日々を過ごしました。「(自分のミスで)患者さんを殺しちゃわないようにね」と先輩にしかられながら、患者さんと向き合う日々でした。

ちょうどその頃、世間では、救急車のたらい回し問題がニュースになっていたのですが、ご存じでしょうか。僕がいた病院も、日々の緻密なベッドコントロールで、先輩や上司や医師たちが一生懸命搬送受け入れをしていました。

ICUのベッドが1つ空けば、救急車をもう1台受け入れられるかも。でもその”1つ”を空けるための転床・転院・退院はそう簡単ではないものです。

そうした状況でも、救急搬送の依頼が止むことはありません。

心肺停止で自宅から搬送された高齢者の方が、骨折するほどの心臓マッサージを受け、たくさんのチューブにつながれたまま亡くなっていくこともあります。なんとか命を繋いでほしいと願ったご家族も、最期の姿に「これで良かったのか?」と後悔を残しながら病院を出ていかれる。

みんなが一生懸命にやるべきことをやっている。だけど、「他にできることはなかったのか」という思いが、いつまでも残っていました。

「家に帰りたい」という患者さんの願い。次々と運ばれてくる救急患者。退院の難しさ。突然の救命治療に意思決定の時間が足りない現実。

こうした問題は病院の中だけで解決するのが難しいと感じていたときに、「訪問看護の重要性」を知ったのです。

患者さんの願いを、訪問看護の力で叶える

訪問看護は、”家に帰る”お手伝いをするだけではないーー。

知れば知るほど、「これからどう生きていきたいか」を一緒に考える看護でもあることがわかってきました。

患者さんやご家族の意思決定に寄り添い、その人らしい選択を支える。それはまさに、看護師が本来担う大事な仕事でした

「家に帰りたい」という当たり前の願いに、ちゃんと応えられる医療現場を目指そう。僕は、訪問看護への道へ進むことを決めました。

……と、きれいにまとめたいところなんですが、もう少しリアルな理由もありました。

当時、訪問看護に関わる20代が非常に少なかったんですよね。だから「こんな自分でも活躍できるかも」と思った。それも理由のひとつなんです。

でも、今もこうして訪問看護に全力で向き合い続けているのは、「訪問看護っておもしろいな」と思えたから。今もその気持ちは変わらず、僕の心の真ん中にあります。

「24時間365日対応」の訪問看護事業を起こした日

「24時間365日対応の訪問看護」と聞くと、「大変だね」と思われるかもしれません。でも僕にとっては自然な判断でした。

だって、毎日ケアが必要なのに「土日は営業してないんで」って断られたら困るじゃないですか。実際、がんの終末期や感染リスクのある処置など、週末もケアが必要な場面はたくさんあります。

一般論として、休日出勤でなんとか回している事業所も多いです。僕は、休みの日に臨時で出るストレスを抱えるくらいなら、最初から土日を含めたシフト体制にした方がよっぽど健全だと思ったんです。

だから僕は、「24時間365日対応」の看板を掲げました。

シフト管理やオンコール体制、教育や情報共有の環境を整えていくことで、スタッフが安心して働ける現場になると感じています。

スケールへの挑戦—1万人の看護師と共に

2016年にWyLを立ち上げてから、全国31拠点、300名近いチームになりました。

「訪問看護の仕事を、もっと極めたい」
「こんなにおもしろい仕事だと思っていなかった」

仲間からそんな言葉が聞けるのが、とてもうれしいです。だけど、まだまだサービスを必要とする人たちの期待には応えきれていません。

全国に170万人いる看護師のうち、訪問看護に携わるのはわずか約5%。もし、WyLだけで、1万人の看護師がいたら、今よりもっとできることがあるのに……。自分の力不足をはがゆく思う日は、少なくありません。

訪問看護の仕事は、こんなにおもしろいのに。

訪問看護の価値—生活と人生に寄り添う仕事

訪問看護は、一人ひとりの利用者さんの暮らしに、長く深く関わります。

どんな人生を歩んできたのか。これからどんなふうに暮らしていきたいのか。ご本人やご家族、生活状況などをふまえながら、よりベターなケアを考えて、届けていく。

一緒に取り組みながら、障がいや病気でできなくなっていたことを、少しずつ取り戻していく瞬間に立ち会えることは、何にも代えがたい体験です。

諦めていた仕事に、3年かけて復帰できたり。「5年ぶりに犬の散歩に行けた」と笑う姿を見られたり。たくさんの”変化”の瞬間に立ち会いました。

あるいは、人生の最期に立ち会うこともあります。

目の前にいる方がずっと大事にしてきたものを、大事にしたまま最期を迎えられるように支えていく。その最期の時間までを共に過ごすというのは、あまり他では経験できないことだと思います。

訪問看護の現場は、資源や状況が毎回ちがいます。その中で、最適なケアを見つけていくには、“応用力””判断力”が求められることも。

そういう面も含めて、プロフェッショナルとして技術を高めていきたい人にとっても、学ぶことが多い場所だということは、ぜひ知っておいてほしいですね。

“やりがい”が見える看護へ

看護の仕事は、やりがいはあるけど成果を定量的に語るのが難しいです。でも、看護師の関わりによって、利用者さんの状態や暮らしが確実に変わっていく──それもまた、紛れもない事実です。

だからWyLでは2018年から「オマハシステム」というツールを使用しています。これは、看護のプロセスを「問題」「介入」「評価」という3つのステップで整理し、記録するツールです。

どんな問題にどう関わり、どんな変化が起きたのかを、グラフやデータで振り返ることができます。

看護師って職業柄、「あれもできたし、これもできたのに……」と反省しがちなところがあると思うんですよ。だけど、蓄積されたデータを見直してみると、利用者さんが明らかに良い方向へ向かっていることがわかる。

自分たちが届けているケアに意味があると実感できると、それは大きな自信になり、日々のモチベーションにもつながっていきます。

次なる挑戦

訪問看護の仕事を始めてから、ずっと大事にしてきたことがあります。それは、「家に帰る」という当たり前の選択肢を、誰もが実現できるようにするという想いです。
24時間365日対応の体制を整えたのも、教育にこだわってきたのも、その一歩一歩がこの目的につながっているからでした。
その選択肢をもっと多くの人に届けるために、WyLは約10億円の資金調達を行いました。
ただ事業を拡大するためではなく、もう一歩先の挑戦に使おうと考えています。医療的ケアが必要な人たちが安心して暮らせる「医療ケア住まい」の整備。
「家に帰る」ことが難しい人にも、「家での暮らし」がおくれる場所をつくります。さまざまな家庭を見てきた僕たちだからこそ、実現できる住まいがあるはずです。

看護師の「成長したい」を後押しする存在になる

また、現場で働くスタッフの「もっと専門性を磨きたい」「技術を深めたい」という気持ちにも、しっかり応えていきたい。
専門資格の取得費用の全額支援もその一つです。中には、入学金と学費で100万円を超える資格もありますが、年間に何人かずつ、そうしたチャレンジを後押ししていきます。
資格をとって、ずっとWyLにいてくれたら嬉しい。だけどきっと、スタッフみんなにとってWyLもキャリアの“通過点”になるだろうという覚悟もあります。
だからこそ、「WyLで働いたから、スキルも考え方も一段上がった」と思ってもらえる場所にしておきたいです。
もちろん、プレッシャーもあるし、うまくいかないこともあります。理想と現実のギャップにがっかりさせてしまったり、「思ってたのと違った」と言わせてしまったり。それはもう、ただただ僕の力不足です。
だけど、訪問看護やWyLに期待して飛び込んできてくれた人が、「こんな仕事がしたかったんだ」と思ってもらえる環境づくりを、僕はあきらめません。
もっと働きやすく、もっとやりがいを感じられる環境を目指していきます。
だって、訪問看護は、おもしろいんだから。

看護師はカッコいい

10億円の資金調達をしたけれど、経営者としては、まだまだです。起業当初に思い描いていた理想には、まだたどり着けていません。日々、現場を良くしようと、もがいています。

僕は、訪問看護の仕事が好きです。だから、経営者という役割も、続けられているんだと思います。

「どんなふうに生きていきたいか」
「どう最期を迎えたいか」

利用者さんとご家族、周囲の方たちと、何度も話し合いながら決めていく。

少しずつ日常を取り戻していく姿や、もう無理だとあきらめていたことに再び挑戦する姿。静かに看取りに寄り添う時間。

訪問看護の現場で得た経験が、僕を前に進めてくれています。もちろん、うまくいったことばかりじゃありません。すごくすごく難しい事例もたくさんあります。

精神疾患を抱える70代の親御さんと、気管切開をしたお子さんが在宅で呼吸器をつけて暮らしている。そんな、さまざまな困難が複雑に絡み合ったご家庭にも出会います。

どれか一つを解決したからといって、すぐに状況が良くなるわけじゃない。それでも、現場の看護師たちは粘り強く関わり続けて、少しずつ、でも確実に、その人の暮らしをいい方向に変えていく

それって、すごく“職人”っぽいなと思うんです。

技術と知識と経験を総動員して、人生を支えていく。そんな先輩たちの姿が、ものすごくカッコいいなと思っています。

「卒業」を目指す看護を

そうした支える看護を提供しながら、僕たちが大切にしている言葉があります。

それが「卒業」です。

卒業は、「看護師さん、もう来なくても大丈夫かも」と、利用者さんに言ってもらえること。それは、病気や障がいがあっても、自分らしく生活できるようになったという証です。

看護本来の役割である、「健康になっていくことを支援する」「生活を(様々な形で)取り戻す」ということに、とても近い考え方です。

もちろん、すべてのケースで卒業が目指せるわけではありません。人生の最期をどこでどう過ごすかという、お看取りは、卒業とはまた別の、もうひとつの大切なゴールです。

全ての人が、「望む場所で、その人らしくいられる」ように支えるという点では、どちらも変わらない看護の価値だと思っています。

ただ、こうした「卒業」や「望ましい最期」を目指す看護が、あまり報われないのも現実です。

医療制度上は、利用者さんが元気になればなるほど、報酬は下がります。「なぜ?」と思うけれど、看護師やリハビリスタッフが長く関わるほど経営が安定する仕組みになっている。今の制度では、卒業が、経営的にはマイナスになることすらあります。

それでも僕は、卒業を目指す現場をあきらめたくない。ちゃんと収益も成り立つように、仕組みを考えて、卒業も事業の安定も、どちらも叶えるために。歩いています。

一生やりたいと思える仕事は、訪問看護

「なんかおもしろそう」という好奇心から始まった、僕の看護師人生。たくさんの現場で、たくさんの人と出会って、訪問看護の仕事を一生やっていきたいと思った。

訪問看護はおもしろい。

何百回と言葉にして伝えてきたけれど、やっぱりこの仕事の魅力は現場にある。だから、もし「訪問看護って、なんかおもしろそう」と思う人がいたら、ぜひ進んでみてほしい。

そして一緒に、いい現場をつくっていけたらうれしいです。

ウィル訪問看護ステーションでは、全国の事業所で訪問看護師の採用を行っています。見学も受け付けているので、気軽にお問い合わせください。

▼採用サイト

https://wyl.co.jp/recruit

  • #訪問看護

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